雑文屋 環

散らします。日常に浮かぶ言の葉。

ゴキブリ

昨日部屋に出たゴキブリが、今日は風呂場に出た。

遮蔽物の何もない風呂場。まるで殺してくれとばかりに。

殺虫剤をかけると隅の方でひっくり返り、まるで命乞いをするかのようにこちらをじっと見ていた。

 

「なぜ、殺されなければならないのですか?」

「私はこれから死ぬのですか?」

 

そうだよ。だって、害虫だから。

誰からも必要とされていないから。

 

自分と似ている気がした。

排水溝を開けてシャワーで押し流すと、するりと下水へと消えていった。